short story
急に冷えた背中の不快さに、薄眼を開けて、驚いた。
今夜も当たり前のように隣に寝ていたゼフォンが、不自然に起き上がった姿勢のまま、あまりに愕然としている。
・・・嫌な夢でも見たかな。
「なんですか、そんな、顔して」
寒気と夜に繰り返した荒い呼吸の所為で、不機嫌な声しか出てこない。
「・・・夢を」
明けの薄明りに応えたのも、少し擦れた低い声。
「そういうの、言っちゃうと実現しないみたいですよ?」
何のジンクスだったか、ゼフォンが昔話してくれたのを思い出して囁いてみる。思わず出かかったあくびに、眠気を思い出す。ねむい。
すると、揺らぐ意識を繋ぎとめるタイミングで、断片的にゼフォンは話しだす。
「・・・どうして、私とは出来ないのに」
“できない”って、セックスとか朝寝とか散々してるし、ゼフォンが言い張ったらだいたいこっちが折れてる。今さら何を出来ないって言うんだろう。
ああ、それにしても眠い、背中が寒い。起きるんなら上掛け返してくれないかな。
「ゼフォン、寒い」
「子供が」
彼の口から、ぽろりと人間臭い単語が落ちる。
「子供が、走ってくるんです」
言いながら、彼はシェラと同じキルトに、元の位置に収まってシェラを抱きしめた。確かな重みが脇腹の上へ、そして低い温度しか持たない手が下腹のあたりで何かを確かめるように、動く。
「金髪に、空色の瞳で、あなたに良く似た」
「それが私の手を引いて行くんです」
何か、“彼”の話とテイストが違う。
それよりもっと愕然としてるような?
「パパとママに会わせてくれると」
「・・・両親、ですか」
口をはさむと、目を瞑ったまま肩口に無言の頷きが返ってくる。
「一人は、当然あなたですよ」
「・・・はぁ」
僕パパかぁ。まぁ、ありえないけど。
「もう一人が、」
そこまで言って、何度か苛立たしげに息を吐いて、話が停まった。唸るような不機嫌の声さえ、ゼフォンにかかれば甘やかな子守唄だ。
どうしよう、寝ちゃう、寝るから早く。
「それで、もう一人は?」
「あいつですよ」
「・・・知らないし」
“He”たくさんいるし。
「ほら、あの、いけすかない城主」
「ああ、ドン・フィオーリ?」
そんなに毛嫌いするコトないのに、どーして勝手にライバルだと思ってるんだろう。
しかもあいつ、とか・・・「は!?」
どっちもパパじゃないそれ。
「ゼフォンちょっと、」
「どうして奴との子供は作れて、私とは駄目なんです?ああ、やはり種族間の壁と言う暗黙のルールが邪魔を」
「まさか、僕がお母さん?」
多少強引に身体の向きを変えて、開かない目蓋で問い詰める。
「当然」
「いい加減にしてください。何度言ったらわかるんですか。
僕は子供産・め・な・い・の!そういう体してないんですってば!」
「でも先程は」
「夢を見たんでしょ?だったら現実と別けて。ちゃんと区別して」
「あんなに似ていたのに」
なおもぶつぶつと呟く頭に、無理矢理キルトを覆いかぶせる。二人分の体温に膨れた布地の中、ぬるいため息が広がった。
「もう一回、夢見て、確かめて下さいね」
例えあなたがパパでも、僕にママは無理なんだから。
fin
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